町でよく見かけるあの救急車、実はいくらするかご存知ですか?
答えはなんと2,000万円から4,000万円!高級車をはるかに超える価格です。
なぜ日本の高規格救急車はこんなにも高額なのでしょうか?
本記事では、元救急隊員である筆者が、車両を構成する高額な医療機器やカスタムの秘密、そして**税金以外**の購入ルート(寄付・補助金)**まで徹底解説します。



救急救命士が使用する高度医療機器はもちろん、赤色灯の位置や車内の積載棚に至るまで、各市町村の地域事情や隊員の意見を聞いて細かくカスタムするんだ。
だから、見た目は同じようでも、中身は一台一台仕様が違うんだよ。





【本題】救急車の価格はいくら?種類別価格帯を解説
町で活躍する**高規格救急車**の価格は、装備や医療機器の積載状況によって幅がありますが、概ね約2,000万円〜4,000万円ほどです。
これは一般的な車両の価格であり、ドクターヘリのような機能を持つ**特殊な救急車**や、近年導入が進む**EV救急車**などは、さらに高額になるケースもあります。
救急車は、消防本部が作成した詳細な仕様書をもとに競争入札が行われ、最も安い価格を提示した業者が納入するのが一般的です。
なぜ高い?救急車の値段を押し上げる3つの要素
救急車の価格が一般的な商用車を遥かに超える高額になる主な理由は、以下の3つの要素に集約されます。
高規格救急車への移行:高度医療機器のコスト
救急救命士法の施行以降、救急活動の高度化に伴い、救急車の主流は高規格救急車に移行しました。これにより、車内に高度医療機器の積載が義務付けられ、車両の価格を大幅に押し上げています。
例えば、以下の機器は非常に高額です。
- **心臓に電気ショックを与える除細動器(AED)**:大体200万円〜300万円
- **バイタル測定や心電図をとるための車載用モニター**:大体200万円〜300万円
これらの機器だけで購入金額の10%以上を占めることからも、医療機器がいかに高額なコスト要因かお分かりいただけるでしょう。
地域特性に合わせた車内カスタム費(特注品)
救急車は、**赤色灯の位置**や車内の積載棚(資器材の配置)など、細部にわたって細かくカスタマイズされます。これは、各市町村の**地域特性**や、実際に運用する**救急隊員の使用環境・意見**が反映されるためです。
メーカーにもよりますが、膨大な選択肢の中から仕様が決められるため、大量に一度に購入しない限り、**全く同じ仕様の救急車は珍しい**と言えます。こうした特注品の製造コストも高額になる理由の一つです。
車両自体の高耐久・高性能化(ベース車の価格)
救急車は緊急走行を繰り返すため、ベースとなる車両自体にも高い耐久性と走行性能が求められます。一般的な商用車と比べ、**悪路走行性能**や**高耐久エンジン**、そして内部の機器を安定させるための**特殊なサスペンション**などが搭載されており、車両本体の価格も割高になります。
救急車は誰がどう買う?購入ルートと財源の仕組み
救急車の購入ルートは、主に税金、補助金、そして寄付の3つに分けられます。
国民の税金と国の補助事業
救急車は**国民の税金**で購入されますが、市町村の財政負担を軽減するため、国や消防庁による**補助事業**が展開されています。
例として「**緊急消防援助隊補助**」があり、この補助で購入された車両は、東日本大震災のような**大規模災害発生時**に**緊急消防援助隊**として優先的に使用される義務があります。
企業や個人による寄付購入の増加
近年、地域貢献を目的として、企業や個人が消防署に対して**救急車購入の寄付**を行うケースが増えています。
寄付金で購入する場合は、金額の制約はあるものの、比較的自由に装備などを選ぶことができるため、地域ニーズに合った車両を導入しやすいというメリットもあります。
救急車の「寿命」と「廃車後」の行方
高額な救急車は、どれくらいの期間使われるのでしょうか。一般的に、日本の消防で使われる救急車の**耐用年数(寿命)は10年〜15年**ほどです。
廃車となった車両は、単に廃棄されるだけでなく、いくつかの道筋を辿ります。
- 海外へ譲渡(寄付):日本の救急車は品質が高いため、開発途上国などに譲渡され、第二の人生を送ることがよくあります。
- 訓練車として活用:車両を解体せず、救急隊員の救出訓練や、事故現場を想定した訓練に使用されることがあります。
【元隊員が解説】高規格救急車に搭載される主な高度医療機器一覧
高額な理由の根幹である、高規格救急車に搭載される主な医療資器材とその役割を解説します。
- **患者監視装置(車載モニター)**:心電図、脈波、血圧、血中酸素飽和度などを測定する**高度医療機器**。傷病者の重症度を判断し、病院選定や処置に不可欠。
- **自動式体外除細動器**:心室細動などの致死的不整脈に対し、電気ショックを与える**高額医療機器**。
- **特定行為セット**:ラリンゲアルマスク、輸液セット、アドレナリンなど。医師の指示を受けた**認定救急救命士**が使用できる。
- **人工呼吸器**:バックバルブマスク・自動式人工呼吸器等。呼吸状態の悪い傷病者への補助に使用。
- **搬送器材**:ストレッチャー(メイン、スクープ型など)。特に**スクープストレッチャー**は、脊椎損傷の可能性がある患者を固定し搬送する際に使われる。
- **脊柱固定用具**:バックボード、頸椎固定カラー、ストラップ。交通事故などの高エネルギー外傷患者の全身固定を目的として使用。
- **救出用具**:サイドウィンドウを割る為のハンマー、シートベルトカッター、バールなど。
救急車の値段まとめと、高規格化が進む日本の救急
救急車の価格が高額である理由をまとめます。
- 救急車は約2,000万円〜4,000万円くらい。
- 高額な理由は、高度医療機器の積載と細かなカスタム費用にある。
- 購入は主に税金、国からの補助金、そして企業や個人からの寄付による。
日本の救急車は、高規格化が進んだことで、病院到着前の救命率が飛躍的に向上しました。こうした高額な費用が、市民の命を守るための必要経費であることを理解し、救急車の適正利用に努めましょう。